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【ビッグスリー】繰り返される政府頼み、救済策は一時しのぎ(岡田晃氏)(08/12/9)

岡田晃氏

 ビッグスリー(米自動車大手3社)の救済問題がヤマ場を迎えている。ビッグスリーは3社合計で340億ドルの支援を求めているが、そのうち年内のつなぎ融資150億ドルを実施する妥協案が浮上し、米政府と議会との間で大詰めの調整が行われている(日本時間8日現在)。だがその案が議会で可決されたとしても、しょせん一時しのぎでしかなく、ビッグスリー再建の道のりはきわめて険しい。

 ビッグスリーはいったん11月までに再建計画をまとめ、政府に250億ドルの支援を求めていた。ところが11月中旬に開かれた公聴会で、ビッグスリー首脳が自家用ジェット機でワシントン入りしたことや再建計画の内容が不十分だったことから批判が噴出し、再建計画の再提出を求められた。これをうけてビッグスリーは12月2日に新しい再建計画を提出し、3社合計で340億ドルの支援を要請した。

経営難の原因は「金融危機」と言うが…

 この新しい再建計画はたしかに、従来より踏み込んだ内容にはなっている。例えばゼネラル・モーターズ(GM)は、(1)「サーブ」の売却など車種を大幅に見直す(2)2012年までに米国従業員を2万−3万人削減するなどで労務コストをトヨタ並みに減らす(3)債務者と労組の協力で負債を300億ドル削減する――などを盛り込んでいる。だが従業員や労務コスト削減が4年後の2012年というのは時間がかかりすぎるし、債務削減の実現性も不透明だ。

 フォードはGMやクライスラーに比べて比較的資金繰りに余裕があるため、抜本的な合理化を盛り込んでいない。クライスラーの計画は他社との統合・提携などが柱となっているが、クライスラーには独ダイムラーと合併したものの失敗したという“実績”があるし、すでに伝えられているGMとの合併にしても、今の両社の状況を見ると合併が再建の切り札とは思えない。3社とも、これでは国民の税金を使って救済してもらうにしては自助努力が足りないと言わざるを得ない。このため先週開かれた公聴会でも多くの議員を納得させることは出来ず、今週になっても支援の法案が採決できないでいるのだ。

 そもそもビッグスリーがこれほどの経営難に陥ったのは「金融危機が原因」(11月の公聴会でのワゴナーGM会長発言)ではない。GMは今回の金融危機が始まる以前の2005年から最終損益の赤字が続いているし、98年には米国市場で70%あったビッグスリーの新車販売シェアは年々低下し、今や50%を割り込んでいる。つまり何年も前から低迷が続いていたのだ。ワゴナー会長は先週の公聴会ではさすがに「我々は失敗を犯した」と経営の誤りを認めたが、本当に再建を図ろうとするならその失敗の原因を明確にしなければならない。

 その失敗の原因とは一時的ではなく構造的なものだ。それは次の4つに整理できる。第1は、低燃費車の開発に遅れをとったこと。これは誰でも知っている。だが燃費だけではない。性能や価格などすべての面でビッグスリーは消費者ニーズに合った車づくりに遅れをとった。これが第2の原因だ。そして第3は合理化が不十分なこと。工場でトヨタ式生産を見習ったりしたものの、製造工程のコスト低減は思うように進んでいない。高コスト体質なのだ。これには全米自動車労組(UAW)の存在が大きく影響しているが、それが第4の原因である退職者の医療費負担にもつながっている。年々増え続ける退職者の医療費を会社が負担しているため、ビッグスリーの経営を大きく圧迫する要因となっている。

望んだ円高、業績には結びつかず

 ではなぜビッグスリーはこれまで、これら4つの問題を克服できなかったのか。その背景を追求していくと、ビッグスリーのある「体質」に行き当たる。それは、苦しくなると政府に助けてもらおうとするという「体質」だ。古くをたどれば、70年代末に倒産寸前に陥ったクライスラーは、政府保証を受ける形で救済されている。80年代には日本の自動車業界による対米輸出自主規制という形で、80年代後半から90年代前半には為替相場の円高誘導によって、いずれも事実上は政府に助けてもらって切り抜けてきた。92年にはブッシュ(父)大統領の来日にビッグスリー首脳が同行し日本に市場開放を迫ったことを覚えている読者も多いだろう。このように、ビッグスリーはすでに何度も政府に“救済”されてきたのである。

 現在のブッシュ政権になってからも、大きくは報道されていなかったが、ビッグスリーはたびたび「日本は円安誘導で輸出を増やしている」と非難し、米国政府や議会に対して日本に円安誘導をやめさせるよう陳情していた。だがブッシュ政権は為替に関しては基本的に市場にゆだねる方針を採ったため、ビッグスリーの陳情を受け入れることはなかったが、皮肉なことに金融危機でビッグスリーの望む円高となった。だが円高のおかげでビッグスリーの業績が上向くことがなかったのは、周知の事実である。

 そして今また救済を求めるという事態となったわけだ。したがって、ビッグスリーがそのような救済頼みの発想を捨てて構造的な弱点を自力で克服するという体質に変えない限り、本当の再建は期待できないだろう。

岡田晃氏

 1971年慶応義塾大学経済学部卒業。同年日本経済新聞入社。産業部記者、編集委員などを経て、91年テレビ東京に異動、経済部長、テレビ東京アメリカ社長(NY支局長兼務)、理事・解説委員長などを歴任。その間、テレビ東京では「ワールドビジネスサテライト(WBS)」プロデューサーをはじめ、数多くの経済番組のプロデューサー、コメンテーターを務めた。

 2006年にテレビ東京を退職し、経済評論家として独立。大阪経済大学大学院客員教授に就任。教鞭をとるかたわら、テレビ出演や雑誌等への寄稿、講演などで活動中。

  

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